2022.04.13
寿命超過蓄電池の部分交換について
浮動充電方式で使用される組電池においては同一形式、同一容量、同一製造ロットの使用を原則とします。
寿命超過蓄電池の部分交換について
⇒ 全数交換が必要です。
寿命期を超過している場合、部分交換を実施し、継続使用すると ①~③に示すリスクや重大事故の懸念があります。
①液漏れによる地絡
電槽と蓋との接着部や極柱部や蓋との封口部分の劣化によって、シール性が失われ、電解液の漏液が生じます。
また、極板が伸びる応力により、電槽蓋や底部にストレスがかかり、亀裂が生じる場合もあります。
各部から電解液の漏液により、導電部と筐体が繋がる事で地絡事故を発生します。
また、地絡電流が流れる事で、蓄電池自体も発熱し、発煙・火災等、重大な二次災害に繋がります。
②発煙・発火等の重大な二次災害の発生
経年劣化に伴い、極板の機械的強度も低下していきます。
極板群の各部位が脆くなった状態で放電すると、充電時とは異なり、通電電流が大きくなる事で劣化部位が発熱します。
その発熱により、電槽から発煙します。
さらにその状態が継続されると、発火等の重大な二次災害に至ります。
また、内部の劣化部品から火花が発生し、水素ガスへの引火爆発や焼損が生じる恐れがあります。
正極格子の腐食
腐食とは鉛合金(Pb)表面で鉛と硫酸が反応して生成する硫酸鉛(PbSO4)の被膜層のことです。
正極板では発生した酸素によって格子が酸化され、硫酸鉛の被膜を生成します。
これが成長した物が腐食と呼ばれるものとなります。
③容量低下による負荷設備の停止
経年劣化により、蓄電池の保有容量は減少し、その後、急激に容量が低下する恐れがあります。
そのため、停電時に負荷設備へ必要な電力を給電出来なくなり、非常用電源として機能不全な状態となります。
【期待寿命とは】
高温フロート加速試験で得られた耐久期間を25℃での実使用状態の期間に換算推定した年数です。
一定条件下で推定した期待寿命は全ての条件下での蓄電池寿命を保証する値ではありません。
周囲温度と寿命の関係(10℃半減側)は以下の式で近似できます。
Y=a×2(25-t)/10
Y:t℃における寿命
a:25℃における寿命
t:蓄電池温度
【期待寿命の一例】 制御弁式据置鉛蓄電池(0.1~0.16C10A 放電負荷)
蓄電池温度 MSE SNS(MSE長寿命)
25℃ 7~ 9年 13~15年
30℃ 5~6.5年 9~10.6年
35℃ 3.5~4.5年 6.5~7.5年
40℃ 2.5~3.3年 4.5~5.3年
放電電流と寿命の関係
経年劣化に伴い内部抵抗が増加するため放電電流が大きくなればなるほど
内部の電圧低下が大きくなり、端子電圧が低下し、放電持続時間が短縮され、
結果として寿命が短くなります。
【期待寿命の一例】 制御弁式据置鉛蓄電池(2.0C10A 放電負荷)
蓄電池温度 MSE SNS(MSE長寿命)
25℃ 5~7年 9~12年
30℃ 3.5~5年 6.3~8.5年
35℃ 2.5~3.6年 4.6~6年
40℃ 1.7~2.6年 3~4.2年
【参考】
①使用途中で何らかの事故によって部分交換する場合
②寿命末期に近い蓄電池において、使用不能となった蓄電池の代わりに応急的に部分交換する場合
・交換する蓄電池の個数は組電池の蓄電池総数の10%程度を目安とする。
・使用不能蓄電池の発生の都度、新品と交換しない。
↓
浮動充電方式で使用される蓄電池は自己放電量の増加と浮動充電電流の
増加が使用年数の経過とほぼ一致するため、蓄電池には使用期間中、常に
自己放電量に見合った適切な充電量が与えられています。
しかし、一組の組電池中に使用履歴の異なる蓄電池が混在すると、
自己放電量と充電量のバランスが崩れ、履歴の浅い蓄電池は過充電気味、
深い蓄電池は充電不足気味となり、蓄電池を良好な状態に維持する事が
困難となります。
充電電圧と寿命の関係
充電電圧が高い場合:充電電流が大きくなり、正極格子の腐食が促進され、寿命が短くなる。
充電電圧が低い場合:充電電流が少なくなり、自己放電により容量低下し、更には正極格子の腐食及び負極板のサルフェーションに至る可能性がある。
よって、適正な浮動充電電圧で使用する必要があり、電圧が基準値より高くても低くても寿命に大きな影響を及ぼします。
蓄電池の安易な部分交換はリスクが大きく、重大な事故に繋がりかねません。
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この記事はTECS事業部が執筆しました。